ある頃からかもさんは自分の思うように物事が出来なくなりました。
かもさんは病院で認知症と診断されています。
最初は思うように歩けなくなりました。
次には思うようものが話せなくなりました。
表情も無くなっていきました。
一日中ものも言わず笑顔もない…そんな日も増えてきました。
でも。
かもさんは歩こうとしているし、喋ろうとしているんです。
ただそう出来ないだけなのです。
そのことに職員さんは気付いてくれていました。
他の利用者さんからは「あの人はワザと喋らない、家では喋ってはず」「なんで自分でご飯も食べないのか、あんなに甘やかしたらダメ」「なんで体操もしない」「ここに何しに来てる」「かわいそうに」「あんなになったらお終いだね」「これは何にも出来ないよ」「放っておけ」そんな言葉が聞こえて来ます。
その言葉をぜんぶかもさんは聞いていました。
ちゃんと聞いていました。
…
この日のかもさんは調子が良く職員さんの言葉かけに「こくん」と頷くことができました。
おはようございます!
「こくん」
さあ立ちますよっ♩
「こくん」
ほんとはたくさんしゃべりたいことも有りますよね?
「こくん」
でも喋られないだけなんですよね?
「こくん」
苦しいですね。
「こくん」
頑張って笑顔を作ろうとされているのが職員さんにも伝わったようでした。
自分たちは分かってますからね!
「こくん」
かもさんは少し嬉しくなりました。
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