私なんで泣いていたんだっけ？　認知症と診断された「かもさん」を通して考えるあれこれ

それまで機嫌よく歌を歌ったり、一生懸命体操されたり、利用者様同士のおしゃべりを楽しまれていた「かもさん」はふと職員さんに向かって真剣な表情でこう訴えました。

「私はここに何をしに来ているの」

「私はここにどうやって来たの」

「朝のことが思い出せない」

そう訴えると、その目から涙が溢れてきました。

そして続いてこう言ったのです…

「私なんで泣いていたんだっけ？」

かもさんは病院で認知症と診断されてます。

かもさんは今の出来事をスグに忘れてしまいます。

覚えることが出来ないといったほうが良いのかも知れません。

今起きた出来事も…

自分でやったことも…

自分で言ったことも…

見たものや聞いたことも…

トイレに行ったこと、ごはんを食べたこと…

そして流した涙の理由も…

覚えていないのです。

そんな「かもさん」を分かってあげてほしいのです。

だから何度も同じ話をするんです。

話したことを覚えていないのですから。

トイレに行ったことを忘れて何度も何度もトイレに行くことだってあるし…

逆にトイレに行っていないことを忘れて行ったつもりになっちゃう場合もあるんです。

それでも今その瞬間にはちゃんと向き合っているんです。

だから…

「私はここに何をしに来ているの」

「私はここにどうやって来たの」

「朝のことが思い出せない」

って真剣に悩むんです。

とっても辛いのです。

苦しんでいるんです。

そんな「かもさん」のことを分かってあげて欲しいんです。


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